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2026年3月 グローバル知財 最新事情 No.8 【知財紛争】Moderna、COVID-19ワクチン特許紛争で9.5億ドルの巨額和解:LNP技術の対価と残るリスク

  • 執筆者の写真: Takao Saito
    Takao Saito
  • 10 時間前
  • 読了時間: 3分

2026年3月4日

日本弁理士・米国弁護士 齊藤尚男


(1)はじめに


 mRNAワクチンの立役者であるModerna社が、長年争ってきたLNP(脂質ナノ粒子)特許を巡るArbutus社およびGenevant社との紛争において、総額9億5,000万ドル(約1,400億円)以上の支払いに合意しました。この和解は、パンデミック以降、知財業界で最も注目されていた紛争の一つに大きな進展をもたらすものです。


(2)和解事項


  1. 一括支払いによる解決 Modernaは、将来のロイヤリティ負担をゼロにする代わりに、一括で解決金を支払う道を選びました。


  2. 判決に連動する「アップサイド」条項 今回の合意には特殊な条件が付随しており、現在進行中の控訴審(CAFC)でModerna側が敗訴した場合、支払総額は最大22.5億ドル(約3,300億円)まで増加する可能性があります。


  3. LNP特許の支配力 mRNAそのものよりも、それをデリバリーするプラットフォーム技術(LNP)の特許がいかに強力であるかを、今回の和解金額が証明した形となります。


(3)実務に与える影響

 

  1. 今回のModernaの決断は、巨額の賠償リスクを抱えたまま経営を続けるよりも、条件付きの和解によって「リスクの最大値」を確定させるという高度な法務・経営判断の結果と言えます。


  2. 日本企業にとっても、将来の主力製品が基盤技術特許を侵害していると指摘された際、訴訟の帰趨に応じた「段階的な和解スキーム」は、事業の継続性を確保するための有効な選択肢となり得ます。


[執筆者] 

   

齊藤尚男(Takao Saito)

齊藤国際知財事務所代表、日本弁理士、米国弁護士(カリフォルニア州)。

主に特許ライセンス交渉、特許侵害訴訟等の知的財産に関連する紛争に関与。また、特許ポートフォリオ・マネージメント、知的財産戦略の策定、 M&A 、企業間の戦略的提携において、知的財産権に関するカウンセリングを行う。18年以上に亘りパナソニックにおいて、特許権ライセンス、知財キャッシュ化、事業契約及び訴訟等の実務経験を有する。2022年齊藤国際知財事務所創業、Squall IP 合同会社設立するとともに、Wiggin & Dana米国法律事務所との提携開始、同事務所コンサルティングカウンセル就任。同志社大学法学部、京都大学法学研究科法制理論専攻後期博士課程卒業 博士(法学)。

 

 


※本ニュースレターは情報提供目的で作成されており、法的助言ではありませんのでご留意ください。また、本ニュースレターは発行日(作成日)時点の情報に基づいており、その時点後の情報は反映されておりません。特に、速報の場合には、その性格上、現状の解釈・慣行と異なる場合がありますので、ご留意ください。本ニュースレターは、各位のご参考のために一般的な情報を簡潔に提供することを目的としたものであり、当事務所のアドバイスを構成するものではありません。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を意図的に省略している場合があります。



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